大阪製ブランドサミット
2022.2.21
お題 1商品企画や新規企画の進め方
まずは株式会社ナカニの中尾社長、いかがでしょうか。
基本的には企画・デザインのチームで行っています。デザイナーは社内に4人、外部に4人。そのうち1人はブランドマネージャーで、「にじゆら」の商品を作るときはすべて彼女の監修を受けて作ります。
どのデザイナーにするかを選んだりもするし、営業マンも兼ねているので事業案件は彼女がやっていることが多いです。
後の3人は出荷や生産管理もしますし、お店にも立っていました。
中小企業で社員数もそんなに多くないので、デザイナーでありながら、その3人が事務仕事でもなんでもやるような企画部です。
お店に立つことでお客さんの反応が見られるし、ディスプレイの仕方や梱包などもすべてデザインに生きてきます。
ちなみに、新商品の年間のスケジュールは、10月頃から2か月位かけて、私とブランドマネージャーと2人で考えています。
そもそもデザイナーさんはどうやって採用されたんですか?
「にじゆら」のブランドを立ち上げた当初は外部のデザイナーだけでやっていたのですが、その当時、店舗に来られたお客さんが「アルバイトしたい」と言って、うちの会社に入ってきました。
それまで注染を外部に発信する人はいなかったので、お店ができたことによる効果ですかね。
そういう意味でも、直営店を展開する効果は大きかったですね。お店が営業マンの代わりをしてくれるので。
次は、藤田社長いかがでしょうか。
うちは人数も少ないので、部署があるというのではなく、基本的には僕とお客さんが作っていくという感じでしょうか。
僕が営業開発しながら一番下の弟が金型作っていく、製造は真ん中の次男がやるという体制でやっています。
社内にデザイナーもいないので、基本的には外部デザイナーです。昔はこちらから提案していくというのが多かったのですが、ここ2~3年位は「作って欲しい」といわれるようになってきました。
お客さんにデザイナーさんがおられて作っていく場合もあれば、年に1回、6月~7月に開催されるライフスタイルエキスポに向けては外部のデザイナーさんと開発していて、新製品を2,3アイテム出そうか、という形で進めるパターンが多いです。
社外のデザイナーさんというと、TENTさんと開発されていますよね。そもそもどうやってお知り合いに?
もともとはTENTさんから「金属加工でサンプルを作って欲しい」と仕事をいただいたのがきっかけです。
その後に僕らがお願いする形になりました。デザイナーさんの選び方ってすごく難しいと思っていて、TENTさんに出会うまでにいろんなデザイナーさんに会いましたが、その人と合うか合わないかはすごく大事。
その人が売れてるとか安いとかじゃなくて、その人と何を作りたいか、っていうのが選び方に関わってくるんじゃないかな、と思います。
リゲッタの高本社長はどんな形で開発・企画をされているのでしょうか。
これは今うちの大きな課題でして…。うちの会社の夢は、企画王国。企画って難しいものじゃないし、そもそも企画がないとものづくりはできない。
毎年企画があふれ出てどんどん新しいものが出ていく会社にしたいけれど、なかなか難しいですね。
もともと、家族五人の会社のときは企画・デザイン・生産管理などを全部自分一人でやっていたのですが、手が足らないので人を増やして、現在企画部は8人。
ただ、だんだん年2回の展示会に商品を出すことが目的になってしまって。なので「デザイン開発部」に変えてしまいました。
そんな中で出た企画が、コロナ禍のお家需要で出てきたスリッパ。デザイン開発部の一人がリゲッタの遺伝子を継いだスリッパを作ってくれました。
もう一つは「プロ野球コラボ」。こんな元気がない時代だから、「リゲッタでプロ野球コラボしよう」という面白い企画が社内から出てきて、コロナ禍をきっかけに営業が日本全国走り回ることができました。
今後も、ゴルフ・介護・ワークビジネス・ウオーキングなど、「足」にちなんだものを作りたい。死ぬまでにできるかわからないけれど(笑)。
デザイナーさんの活用法でいうと、内製化しすぎると外からの知恵が入らないので、少しずつ外部にお願いして、社内に好循環を与えたいというのが、僕のデザインや開発・企画の考え方です。
今は内部のデザイナーさんがほとんどですか?
そうなんですよ。ただ生野区内では生産レベルの限界があるので、考える方も限界があるんです。
「こんなん絶対作られへんわ」って言われるから。それが外部の力を借りるとできたりする。なので内製化もやりすぎず、時には外にも出るっていうのも大事だと実感しています。
お題 2いかにして売るか
続いて、商品は開発できたけれど、それをどう販売していくか。藤田社長、いかがでしょう。自社商品を販売するとき、まず何をされましたか?
「フライパンジュウ」に関しては、PRTIMESを1件発信しただけですね。
今までになかった見た目なので、結構いろんなメディアさんから取り上げていただきました。
そこが大きなきっかけだったんですね。
スタートは良かったですね。YouTubeやインスタグラムなどのSNSでフォロワーの多い方が結構発信してくださって。
普通のことじゃなくて、変わったことをしないと取り上げてもらえないので、結構重要なのかなと思います。
変わったことというのは?
「フライパンジュウ」の場合はまず見た目が普通じゃないんですよね。あとその前に販売した商品「フライパン物語」というカスタマイズできるユニークな販売方法もどこもやってなくて。大阪製ブランドの冊子がメディアの目に留まって取り上げられることもありました。最近でいうとオープンファクトリー化による効果も大きかったですね。あと、これからうちがやろうとしているのが、飲食などでよくある移動式の販売カーです。それをフライパンでやろうかなと。今ちょうどトラックを作っています。
それはメディアを意識してされているんですか?
意識してますね。本当に売れるかわからないけど、そういうわけのわからないことをやってみて発信すると、メディアも取り上げてくれやすいんじゃないかと思います。
そして取材が来るたび「次これやるよ」とジャブを打っておく、っていうのは結構していってるかもしれないですね。
続いて、ナカニの中尾社長はいかがでしょう。
うちも広告はやっていません。今はコロナ禍ということもあり、SNSを活用しています。
インスタグラムもフォロワーが1万人位になると自社のメディアになるので。例えば、商品を売り出すタイミングでインスタライブをすると、そのままオンラインショップで20~30人がすぐに買ってくれることもありました。
メディアの取材も基本的に断らず、自社のSNSに呼び込めるようにしたいですね。
伝統工芸ということもあり会社にストーリー性があるので、メディアのウケもよく関西ローカルの報道系はほとんど出演しています。
ただテレビの影響は1週間程度で薄れるので、その時に自社のSNSでどこまでファンを惹きつけられるかが勝負だと思っています。
SNSは、僕が入社した当時からコンサルにお願いをしていて、今流行っているSNSとか、フォロワー数の増やし方とかを教えてもらっています。
TikTokは他社のてぬぐい屋さんでされているところもあるし、悩みながらですがもっと活用したいです。
ナカニさんといえば、手ぬぐいマスクの作り方のYouTubeでもかなり注目されましたね。
縫わずに裂いて作るマスクですね。マスクが品薄だったコロナ初期に、スマホでパパっと撮影したものを試しに上げてみたらその動画だけがグッと上がって。
YouTubeの登録者数も500人位だったのに。10万回再生された後、1カ月に10件くらいメディア取材もありました。YouTubeの影響力はすごいですよね。
自然とGoogleの検索順位も上がって、オンラインショップとインスタのフォロワーが一気に増えたきっかけはそれですね。
うちには広報部もSNS担当もいないので、女性スタッフが勝手に上げていたのですが(笑)。
SNS担当がいらっしゃらないんですか。
店舗や企画のスタッフが、自主的にやってくれています。
インスタグラムだと工房の様子をストーリーに上げてくれたり。1人でやると単調になるので、あえて担当を決めていません。
高本社長は昨年CMを打たれたようですが、効果などいかがでしたか?
僕も基本的に有償広告はやらないのですが、初めてのことは絶対にやってみようと思うタイプなので挑戦しました。
効果は…難しいですが、CMよりスポンサーとして出演した番組のほうが効果はありましたね。
土曜の朝にやっている関西ローカル番組で、売れている商品を紹介するあのコーナーです(笑)。
2か月間お客さんがひっきりなしに来てくれました。ただ広告は固定費がかかるので、やはりSNSに力を入れたいと思っています。
うちのSNSはバズッたことがないので(笑)。中尾社長のお話はうらやましい限りです。
僕らもものづくりと並行して、自分たちの商品の価値を全力で伝えないといけないと思っています。
SNSは今インスタグラムがメインですか?
インスタグラム、ツイッター、フェイスブックがメイン。最近TikTokをはじめようかと思っていますが苦戦しています。
おしゃれすぎてもリゲッタのコンセプトからずれてしまうので、インスタよりツイッター向きなのかな。藤田社長のように、変わったことをしないといけないなと思っています。
リゲッタさんには、広報部がありますよね。
広報部はあるのですが、実はいまスランプに陥っています。SNSが弱いんですよ。
テレビ局が扱わざるをえないような商品を作らないとだめだなと思っています。
テレビ局の目に留まるように見せていくのも大事ということですね。
お題 3大阪製ブランドに認定されてよかったこと・活用方法
大阪製ブランドの活用方法・認定されてよかったことなど、あれば教えてください。
うちはまず、大阪ものづくり優良企業賞「匠」を取らせてもらって、そのあと大阪製ブランドの認定を受けて。
その2つがきっかけで八尾市や近畿経済産業局などの行政機関にうちの会社を知っていただき、つながりができたことがすごく大きかったですね。
そこで今やっているオープンファクトリーのことなど、いろんな事を教えてもらえたので、
大阪製ブランドを知らない人も多いので、「すごい賞なんだぞ!」という感じで言いまくっています。
1番うれしかったのは2015年、大阪製ブランドでロールモデル(今はベストプロダクト)というのをもらった時、とある番組の取材でけっこう長い時間紹介されて、それはやっぱり会社が沸きますね。
「大阪製ブランド」がついてると海外の人からも喜ばれます。
大阪で作ったものの中でも選ばれているという権威があるとスタッフも売りやすい。大事に使っていきたいなと思います。
あの番組にはうちも取材されたのですが、あの放送はリゲッタさんの放送かな、という位うちは薄かったですね(笑)。
うちは大阪製ブランドができて3年目の時に認定いただいて、その時に初めて大阪製ブランドを知りました。
ただ、ここ2,3年すごく言われるようになってきましたね。
大阪製ブランドのおかげで民間企業や行政、百貨店からも声をかけていただけるようになり、すごく浸透していっているのを感じます。
お題 4登壇企業から各社への質問(採用・人材育成・今後のビジョン)
登壇企業の皆さんから各社へお聞きになりたいことはありますか?
たくさんありますが、どうしよう…(笑)。うーん、採用活動についてお聞きしたいです。
うちは今自社のSNSだけなんですが限界があって。求人広告はお金がかかるし、どうやったら質のいい人材が採用できるんでしょう。
うちは求人情報誌です。金額もあまり高くないので。2021年に会社を改装してからは、来る人の質も人数も一気に変わったので、社屋をきれいにしてよかったなと思います。
今までは人手が足りないから、必要な部署の人材を採用するという感じだったのですが、それではなかなか長続きしない。
そんな中で、10年先、20年先のことを考えると、企業文化や理念などとフィットするかということが全てなんだな気づいたんです。
うちでは、2021年からやっと新卒の採用をスタートしました。社会経験のない「まっさらな人が来る」ので、社員たちにも会社のマニフェストとかカルチャーブックを理解していないと、という緊張感が芽生えるんです。
そうして、経営者だけじゃなくて社員が本腰を入れて、「この人を仲間として大事に育てていこう」という循環を生むことが重要だなと思っています。
面接ではよくても採用してみたら続かないということありますよね。
経営理念を見直すだったり、社屋をきれいにするだったり、働いてみたいと思えるような会社にしないといけないなというのをすごく感じました。
ありがとうございました。
僕は、そこからの人材育成について聞きたいです。
うちはオープンファクトリーに一般のお客さんが買いに来られることで社員のモチベーション上がって喜んでいたのですが、すぐに慣れてしまいました。
メディアに取り上げられても同じですぐに慣れる。どうしたらその後もモチベーション上げていけるのかっていうところが知りたいですね。
難しい質問ですね…。そもそもどうやったら、人材育成されたかと考えるのがすごく大事だと思っていて。
「うちの部署は」ではなく、「うちの会社は」という気持ちを持ったメンバーが増えてくるとすごく頼もしくなる。
そんな人材をどうやって増やすか。そのためにやっているのが、社長もやったことのないことをするということ。
例えばみんなで料理を作るとかでもいいんですけど、やったことのないメンバーで展示会に出展してみるとかね。
何かを一緒にすることで連帯感が生まれて「われわれの会社は」って思えるようになると思う。そういうのをテーマに3年ぐらい合宿を重ねてきました。
人材育成できたかどうかはわからないけれど、やっていてよかったとは思います。
社内研修は合宿がメインですか?
そうですね。正社員50人に2日間の日当を出すのでコストはかかりますが(笑)。
たとえば、ある年は部署ごとに「自分の部署と役割」と2日間かけて考えてもらって、次の年は部署を混合してやったり。
みんな、合宿は嫌じゃないけど、頭を使いすぎて疲れるって言いますね。
合宿までされている企業は珍しいですよね。
ちなみに右腕はいますか?
15年前は1人もいなかったですが、今は…8本位ある感じです。やっと僕の弱みも見せられるようになってきました。
僕より力があることもわかってきたので、右腕というには失礼かもしれません。時間かけるって大事だなと思います。
高本社長から聞きたいことはありますか?
経営者として、こんな会社にしたい!というビジョンはありますか?
難しいな…。でも最終利益50%じゃないかな。いかに利益を残してちゃんと法人税払って、それがずっと回るような利益追求をしていきたい。
売り上げというよりは利益追求をやって、それを社員に還元して法人税を払っていく、という仕組みはしっかりつくっていきたいと思います。
商品としては大阪のお土産にしたいというのがあって、イメージとしては551です (笑)。
駅各所にうちのてぬぐいが買える場所がある。このコロナ禍でも551って行列じゃないですか。大阪を拠点に大阪でお店を増やしていって、「大阪に来たらにじゆらの手ぬぐいを買って行こう」という風にうちのブランドを確立していきたい。
会社としては社員に給料をもっとあげたい。できれば一部上場企業に負けないような。
そのためにはもっと利益を上げていかないとなと思っています。
僕の夢は、うちの社員の8割に、人生の最後に「リゲッタで働いてよかった」って思ってもらうこと。そういう気持ちでいくと売り上げが上がると思うし、面白いだろうなと思います!