認定企業の声

有限会社 種村建具木工所

自社への誇りと想いを詰め込んで
伝統技術をリブランディング

有限会社 種村建具木工所

新規事業担当役員
種村 貞子 氏

空間と心に彩りをもたらすインテリアで
4製品が大阪製ブランドに認定

現在4つの製品が大阪製ブランドに認定されている種村建具木工所。2013年度に初めて認定を受けた「彩り障子®」は、自社初のオリジナル商品だ。バブル期以降、下降の一途をたどる受注難に悩まされる中、自ら動くことを決意した種村貞子氏が発案した。

町工場は待ち工場になったらダメ」という言葉に出会い、13年前、当時では珍しかった自社PRのためのHPとブログを立ち上げた貞子氏は、WEB上でとあるランプ店と知り合った。「アジア風の素敵なランプに合う障子を作りたいと思って、社長に障子をカラフルにしてとお願いしたら、神聖な障子に色を入れるなんてなんてことするんだ!と反対されました(笑)」。

「彩り障子®」は、生活様式の変化に伴い和室が減りつつある中、「洋の空間でも和の木工技術を残したい」という想いで現代の住宅にも合うよう開発された。従来の障子に色とりどりの和紙をパズルのように組み合わせ、ステンドグラスのような美しさを放つ。

和にも洋にも合うので、壁掛けや屏風としてだけでなく、ランプや小物入れ、エントランスなど様々な演出ができる。幾度も試行錯誤を重ねながら、2010年に商品化にたどり着いた。「認定を受けたとき、うちはダメかと思っていたので、すごくうれしかったです。それまではオリジナル商品を作ったことがなかったので、認定をいただいたおかげで百貨店やECサイトに出品することができて、すごく革新的でした。
そこからは商品開発の度に、開発したら大阪製ブランドに申請しよう、という気持ちを持っています」。

オリジナル商品第一号の「彩り障子®」。待つのではなく、自らが動くことで道が開けることを教えてくれた。

1人のデザイナーとの運命的な出会いにより
伝統技術に洗練されたデザイン要素がプラス

2016年度に認定されたimadoco「現代(いまどき)の床の間」シリーズでは、初めてプロダクトデザイナーとタッグを組んだ。デザイナーと組みたいがどうすればよいかわからず悩んでいた時に、たまたま大阪府の担当者に紹介されたのが、ナカジマミカ氏だった。「以前に展示会で知り合い、素敵だな、組みたいなと思っていたデザイナーさんだったので驚きました」

運命的な出会いから「imadoco」の開発が始まる。貞子氏が商品づくりで大切にしているのは、「心が温かくなり、笑顔になってもらえるものをつくりたい」という想い。「きっかけは百貨店の催事でお客様から『絵手紙などを飾れる素敵な家具が欲しい』という要望をいただいたこと。ニッチなところではありますが、そのお客さんに喜んでもらえるものを作りたいという想いで開発しました」。
「imadoco」は、「飾る」という機能に特化したシンプルなデザインで飾りを引き立て、ほっと心が和むような上質な空間を作ってくれる。「デザイナーさんにお願いして感じたのは、私のデザインした彩り障子®はまだまだ改良の余地があるんだということ。結局職人さんが作りやすいものを考えてしまうし、社長も、私(内部からの声)にはそんなのできないというのに、外からの声になると「できる」という(笑)。いろいろなアドバイスを受けられたのはすごくありがたいことだと思います」。

外部からの刺激は職人魂にも火をつけ、一歩踏み出すきっかけに。デザインと技術を融合させ商品を作り上げるという大きな後押しとなった。光箱®は 2011年に貞子氏が企画とデザインをし、2014年の展示会に出展した時に、ナカジマミカさんから掛型を加えてはどうかと、アドバイスをもらった。そうして玄関や寝室など光を持ち運ぶ感覚でさまざまなシーンで使用できるモダンな和照明を生み出した。

大阪製ブランド認定前は工務店からの受注生産のみだったが、認定後はデザインも求められるように。今も変わらずBtoBが事業の柱だが、HPから見てくれる人が増え、一般客からの問い合わせも圧倒的に増えた。「いいものを作っている」という職人たちの自負心も大阪製ブランドの認定でより強くなったという。「HPを見たら大阪製ブランドに認定されていることで信頼感があるし、この会社で作りたいと思ってくれている方は増えてきているのではないかな。あと、お客さんがこられたら大阪製ブランドの冊子を見せて、自社だけじゃなくて他の会社も紹介します。私たちもこんなに素晴らしいものづくり企業の一員だということがすごくありがたいです」。さらに、工房見学や、職人の仕事を見ながら打ち合わせがしたいという要望も増え、1階を見学スペースに改装する計画も。「目標は、ワクワクするような工場です」

自社商品が大阪製ブランドに認定されたことは、“建具だけでなく家具も作れる、組子もできる”という同社の強みを世に広めるきっかけになった。 https://www.tanemoku.com/

積極的な自社アピール力の源は
「職人の仕事を伝えたい」という想い

2021年度に認定された「花組子®ペンダントライト」は和の伝統技術である「組子」の七宝モチーフが、職人技と洗練されたデザインにより、モダンな空間にも映える逸品。縁起の良い七宝組子の優しい明かりで心をほっと和ませてくれる。「組子」は釘を一切使わず細かい木片を組みこむ欄間などに代表される伝統手法。

七宝組子製作は種村建具木工所としても初めての試みだったが、ナカジマミカ氏からの七宝組子を薄く組むという提案で繊細な表現が実現。商品づくりの原動力はいつもお客様の声。照明が欲しい、組子のお皿が欲しいなど、貞子氏がお客様の声を日々頭の中に蓄積していき、「こんなのあったらいいな」の想いを原動力に、商品をカタチにしていく。

「規模の小さい会社なので、普段から異業種や公的機関などと繋がりを持つことを大切にしています。大阪商工会議所や大阪産業局などのセミナーに参加したり、大阪府が実施する経営革新計画にチャレンジして承認をいただいたり。他にも関西広域連合など様々な支援機関等と積極的に関わることで、活用できる補助金などの情報をいただけたりします。補助金をうまく活用しつつ、売り上げを上げ、職人さんの給料も上げていけたらなと思っています」

新商品開発だけでなく、職人のサポート、営業、販路開拓…数々の仕事をしなやかにこなす貞子氏。そのパワーの原動力はどこにあるのだろう、「宣伝しているつもりはないし、営業だと思っていないので、営業の種村貞子と呼ばれた時はびっくりしました(笑)。私はただ職人さんの仕事が好きなんですよ。職人さんは寡黙だから私がみんなの想いを代弁しているだけ」

現在は、「衣・食・住の七宝組子」をテーマに花組子®シリーズを展開。衣=かばん、食=プレート、住=照明がラインナップされ、照明は3つセットで購入する人も多い。「花組子®のバッグはフランスなどの海外向けにしたほうがいいという声をよくいただくのですが、そちらに注力しすぎると本業ができなくなるのでバランスよくやっていきたいです」。新製品を産み出す発想とそれを実現する建具・家具職人たちと共に世界へ挑戦する種村建具木工所の夢は続く。

建具の職人、家具の職人がいて、社長は建具も家具両方の技術を持つ。それぞれに異なる技術を持つことも強み。事業の比率としては、家具・建具が約9、オリジナル商品が約1の割合。